HIFIMAN R2R2000(Red) 音質のレビュー

HIFIMAN R2R2000(RED)は、HIFIMANから発売のBluetoothレシーバー兼デジタル・オーディオ・プレイヤーです。

はじめに

本機より先に発売された上位機種R2R2000が、R2Rラダー方式のDAC IC「PCM1704K 」を搭載ということで話題になりました。DAC(Digital Analog Converter)とは音源データ(デジタルデータ)を音(アナログ信号)に変換処理する電子回路で、オーディオ製品では重要視されています。

「R2R DAC IC」は分解能は24bitが技術的限界で、歩留まりが悪く「レーザートリミング」と呼ばれる非常に手間のかかる修正工程が必要でコストがかかり量産に不向きなため、だいぶ昔に生産が終わっています。PCM1704は分解能24bitのR2R DAC ICの最高峰で、さらにその選別品がPCM1704Kです。そのためPCM1704Kは非常に高価です。

一方、現在広く生産・供給されているDAC ICは「デルタシグマ型(ΔΣ型)」です。高サンプリング周波数に対応でき、製造しやすいので主流となっているそうです。R2R DACは「PCM音源をそのままアナログ変換処理できます」が、デルタシグマDACは「PCM音源を別の形式に変換しなければアナログ変換処理できません」。デルタシグマではPCMをそのまま扱えないため音質的に不利で「PCM音源の再生ではR2R DACの方が音質が良い」とされています。

と、ここまでDACうんぬんと書いたことはネット情報の受け売りで、私も詳しくは理解できていません(笑)。間違えていたらスミマセン。とにかく「R2R DACはPCM音源をネイティブに再生できるので音質が良い」と言うことです。

ジャンルによりDSD音源も散見されますが、現在も圧倒的にCD、ハイレゾ音源、ストリーミングなどPCM音源の方が多いです。HIFIMANが「音質重視」で生産終了で流通在庫もわずかで高価なR2R DACのPCM1704Kを敢えて選ぶというのは、ある意味当然なのかなと思います。

しかし、R2R2000結構良いお値段いたします。興味はありましたが手が出せなかったところに、DACを「PCM1702」に変更し価格が半額以下になったR2R2000(RED)が発売されました。PCM1702もPCM1704K同様生産されていません。PCM1702は分解能20bitと少しグレードは落ちますが「R2R DACの音」は堪能できると思いますし、持ってる音源のほとんどが16bitの私にはPCM1702でも十分かなと。「142gと小型軽量」「4.4mmプラグ」「高出力」と個人的に魅力的なスペックでしたので購入しました。


届いた外箱には「R2R2000」とあったので「間違えたのかな?」と期待しましたが、中身はちゃんと「R2R2000(RED)」でした(笑)。本体裏面の表示もR2R2000で、DAC以外は全て上位機種の流用なんでしょうか? しかし箱の中は「余裕ありすぎ」ですね(笑)。


本体サイズは交通系ICカードやクレジットカードより少し長いくらいで、ポケットにすんなり入ります。重量も142gで持ち運びに苦労しません。大きく重いと使用頻度が減るので、小型軽量に越したことはありません。傷の事を考えればケースに入れたいのですが、この手の小型DAPはケースに入れると一回り大きくなり、ポケットに入れづらくなったりするので悩むところですね。


黒地に白表示のモノクロ有機ELと独自OSで消費電力を極力抑えて「音質に電力を全振り」しています。この潔さが男前ですね。


手持ちのイヤホンをつなげてみた結果

FitEar TO GO! 334では、4.4mmポート・Lowゲインで曲間の無音時に「サー」とノイズが聴こえます(曲中はそんなに気になりません)。4.4mmポートの「Super Lowゲイン」にすればノイズは無くなるんですが、高・中音域がスカスカに痩せて、非力なDAPのような感じに音質が落ちます。正直Super Lowゲインの音で聴く気になれません。FitEar TO GO! 334より、さらに高感度のバランスド・アーマチュア(BA型)イヤホンはたくさんありますから、BA型ではノイズは避けられないと思います。BA型しか持ってない方にはあまりおすすめしません…。

一方、ダイナミック型イヤホンでは、4.4mmポート・LowゲインでAr:tio CU1、DITA Dream XLSで聞いてみましたが、ノイズは無いに等しいほとんど気にならないレベルでした。とはいえ、両方ともすごく鳴らしやすいイヤホンではありませんが…。他のダイナミック型イヤホンでもノイズは気にならないと思います。アンプのパワーが有るのでインピーダンス高めのHIFIMAN RE800 silver、RHA CL750など「ちょっと鳴らしにくいダイナミック型イヤホン」はとても相性が良いと思います。


音質について

DAP(Hifiモード)として使用、イヤホンはDITA Dream XLS(4.4mm)での感想です。

  • 音源に少し近い感じ。
  • 高音、中音、低音は量的にほぼ一緒。フラット。
  • 芯のある高音
  • スピード感と弾力を感じる締まった低音。
  • 存在感のある中音域。
  • 音の階調の滑らかさやツヤを感じる。
  • アタック感が少しだけ強め。

まず印象的なのは「引き締まって弾力のあるドラムとベース」です。レスポンスの良い低音がとても気持ち良いです。ボーカルはがなり・抑揚などを拾って個性が引き立つ感じで、コーラスも背景に埋もれない芯の強さがあり、ボーカル・コーラスなどの歌声に「ライブ感」を感じます。シンバル・ハイハットは金属的で中身の詰まった感じ。シンセやブラスはツヤがありアタック感が少し強めで迫力があります。ロック、ポップス、ダンスミュージックなどはとても合うと思います。カリカリした音のエッジのシャープさはありませんが、トーンの滑らかさに重点を置いた解像感の良さと、歌声や楽器のキャラクターを描き分ける描写力の高さを感じ、そのような意味で「自然な音、良い音」だなと思います。

以外だったのが、同じ曲のCDとハイレゾ音源(PCM・24bit/96kHz)の聴き比べです。CDはメリハリがあるのですがそれがキツく感じられ、ハイレゾはそのキツさが減って丁寧さと滑らかさが加わって音質の向上がはっきり感じられます。20bitのR2R2000(RED)でも24bitハイレゾデータの音質の良さがよくわかります。同じ音源をAstell&Kern SE100(32bit デルタシグマ型DAC)で聴いていた時は、ハイレゾとCDの音質の差がはっきりとは感じられませんでした。「24bit/96kHz程度のハイレゾではあまり意味がないのかな?」と勘違いして、ハイレゾ音源の購入に消極的でした。これからはハイレゾをメインで買い揃えたいですね。

R2R2000(RED)の音質はR2R DACの特徴そのもので「ツヤと張りと存在感のある聴きごたえのある音」です。この音に慣れるとデルタシグマDACのDAPの音が「ちょっとあっさり」聴こえます。

試聴でパッと聴いても耳が慣れてないこともありますが、音質の良さに気づけないかもしれません。電源入れてすぐよりも、4曲くらい再生して温まった方が音が良い気もします。最初は「?」でもじっくり聴き込んであげてください。


高出力が故に注意が必要

出力の高さも音質に一役買っています。イヤホン・ヘッドホンのポテンシャルを引き出してくれてます。駆動力は無いより有るに越したことはありませんが、高出力ならではの注意もあります。

ボリュームノブの誤操作などで、いきなり爆音が出てイヤホンや耳を痛めないために「電源を入れてから最初の再生時の音量は、Lowゲインの場合『10』に強制的に下げられます」。電源を入れてから再生開始前にボリュームノブを回しても、画面上部の音量レベルの数字だけはボリュームノブを回した分上下しますが、『実際の再生音量は10』ですので、実際の音量と表示にズレが生じ不具合が起こります。このズレは電源を入れ直せば治ります。AKなどのDAPに慣れてると再生前にボリューム調整することはよくやると思いますので注意してください。

とにかく電源を入れたら「まず再生を始めてから、次にボリュームノブを回し音量を上げる」ようにしてください。ゲインを変えた時も、念のため電源を入れ直してボリュームをリセットすることを強くお勧めします。


高音質Bluetoothレシーバー

UIでツッコまれることの多いR2R2000(RED)ですが、本来は「高音質Bluetoothレシーバー」です。Bluetooth接続してスマホから自分の好きな音楽再生アプリを使えば、アートワークの表示、タッチパネル操作、ギャップレス再生が問題なくできます。iPhoneはHWA未対応で、AACでの接続となり最高音質とは言えませんが、使い慣れたアプリのストレスのないUIで使用できます。

実はスマホがHWAに対応していなくても「HIFIMANアプリ」を使えばHWAコーデックでのハイレゾ再生が可能です。残念ながらこのHIFIMANアプリ(iOS版)は「強制的に曲の順番がアルファベット順に変わる」「ハイレゾファイルは全て『Unknown』という名前のアルバムに勝手にまとめられる」など笑っちゃうほど使いづらいのですが、HWAの音質の確認はできます。HWAで聴くと「DAP内の音源を再生しているのか、Bluetooth経由の音源なのか、すぐにはわからないほど音質は良い」です。


使い勝手など

  • DAP使用ではギャップレス再生はできません。Bluetoothレシーバー使用ならギャップレス再生できます(HIFIMANアプリを除く)。
  • UIは昔のMP3プレイヤーのようですが片手で操作できるのは便利です。慣れれば実用十分のレベルです。
  • アーティストメニューなどでボタンを長押してもスクロールしません。ひたすら「V(下)」を連打することになりますので、microSDに曲を詰め込みすぎるとアーティスト名表示が大量になり、選択が面倒になります。
  • microSDは、class10でも読み込み速度がかなり高速でないと再生中に音飛びしたり、急に「サポートしません」と表示されて再生が停止します。ちなみに私の使っている「Samsung EVO Plus 128GB 」では音飛びは全くありませんのでオススメです。
  • CDからリッピングした曲で曲の終わりに甲高い大きなノイズが出ることがあります。私の場合はMacのiTunesでリッピングしたものでノイズが出ましたが、XLDにリッピングソフトを変えたら治りました。しかし、必ずiTunesでリッピングすればノイズが出るわけでもありませんし、ノイズが出る割合は300曲に1曲くらいです。
  • バッテリーはALAC音源、4.4mmバランス、Lowゲイン、音量20で4時間ほど持ちます。音質と高出力を鑑みれば良い方だと思います。バッテリーの残量表示はアバウトです。「半分表示になったから残量は50%」ではありません。ここから以外と伸びます(笑)。バッテリーが少なくなると充電を促すアラート出ますが「取消」を押せばまだ使えます。このアラートは2,3回出ます。本当にバッテリーが無くなると「バッテリー残量が少ない!間もなく電源が切れます」と表示されて落ちます。充電は空から満充電でも1時間で終わります。充電が早く終わるのは助かります。
  • 電源の切り方にコツがあります。電源ボタンを3秒長押しでシャットダウン、10秒長押しすると強制終了になるのですが、シャットダウンをしたいのに強制終了になることがあります。「電源ボタンを3秒長押して離す」と確実にシャットダウンできます。フリーズなどで強制終了すると画面に焼きついた跡のようなものが残るのですが、次回電源を入れれば治ります。


最後に

PCM音源の再生では、現在主流のデルタシグマDACとR2R DACとでは「高音質に対しての解釈が違う」と思えるような差を感じたのが面白かったです。「デルタシグマDACの高解像感やサラッとした聴きやすさ」も「R2R DACのツヤや腰の座った感じ」も、どちらも「高音質」なのですが、「私にとってPCM音源をより魅力的に再生できる」と感じたのはR2R DACの方ですね。

残念なのはPCM1704KやPCM1702がすでに生産されてなく、流通在庫も超希少と言うことです。これらのR2R DACを搭載したDAPが今後は出てこなくなるのかと思うと、非常にもったいないですね。

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