RHA CL750

RHA CL750は「鳴らしにくい150Ωの高インピーダンスイヤホン」です。販売終了していましたが、再販売の要望が多くて数量限定で再発売されたそうです。一般的なイヤホンのインピーダンスは16〜24Ωくらいですから、150Ωは突出しています。「鳴らしにくい」と言われると『鳴らしたくなる』のは人の常。税別で9,900円とお手頃でしたので、ネタとして面白半分で購入してみました。初めに言いますが、『今までに聴いたイヤホンでもっとも驚きが大きかったイヤホンの1つです』。


鳴らしにくいとは

私もあまり詳しくはありませんが、大雑把に言うと、イヤホンは低インピーダンスでは音量は大きくなりますがノイズを拾いやすく音が歪み、高インピーダンスでは音量は小さくなりますがノイズが少なく締まって澄んだ音になります。高インピーダンスではリスニングに十分な音量を得るために必要な電圧が高く、高出力のアンプが必要となります。しかし、一般的なスマートフォンやポータブルDAPではアンプ出力が低いため、ボリュームを上限近くまで上げなければ聴こえづらく「鳴らしにくい=音量が取りづらい」のです。

もう一つ、鳴らしにくいには「高い駆動力が必要」と言う意味もあります。アンプの出力が不足するとイヤホン・ヘッドホンのドライバがその性能や本来の音質を発揮できず、音が痩せて迫力なく平面的で貧弱に聴こえます。

鳴らしにくいとは「十分な音量が取りづらく、良好な音質で駆動させる高出力のアンプが必要」と言うことなのです。

「じゃあ、ポータブルアンプ使いましょう」というのはひと昔前の話。最近のDAPはアンプ出力が高い機種もありますので直刺しでも大丈夫でしょう。


どれだけ鳴らしにくいのか

iPhone、ONKYO DP-S1、Astell&Kern SE100、HIFIMAN R2R2000(Red)と手持ちの機器につないでみました。接続は全て3.5mmアンバランスです。イヤピースは付属のシングルフランジです。


[iPhone Xs]

3.5mmアダプタを使ってLightning接続。音量MAX2つ手前で音量は取れました。もっとささやくようにしか聴こえないのかと思っていましたので意外でした。とはいえ、抜けが悪くスピード感もありません。輪郭のあいまいな高音がシャーシャーと耳につきます。


[ONKYO DP-S1]

Highゲインで音量は49/60くらい。iPhoneよりは音の奥行きはありますが、抜けとスピード感もなく高音がシャーシャーと耳につきます。バランスではありませんので本領発揮とはいえませんが、ゲイン設定があるのでもうちょっと鳴らせるかなと思ってました。150Ωはさすがにきついですね。高インピーダンスの恩恵は感じません。


[Astell&Kern SE100]

音量は123/150くらいです。SE100にはゲイン設定はありません。いつも使うイヤホンで60〜80くらいですのでやはり高めですね。CL750の硬く締まってレスポンスの良い音は3.5mmアンバランスでも分離が良く感じられます。 キレイな音ですがちょっとおとなしく感じます。SE100もバランスではありませんので本領発揮とはいえませんが、まだアンプのパワーが足りないようです。


[HIFIMAN R2R2000(Red)]

Highゲインで音量は23/32くらいです。まず、一聴して音に力強さを感じます。HIFIMANは3.5mmアンバランスでも良いですね。最も驚いたのはノイズが出やすいHighゲインでの背景の漆黒さです。その漆黒の背景に浮かぶ澄んで締まった音は、高インピーダンスの恩恵が存分に感じられます。素晴らしいです。立体感や分離も良く、あえてバランスにしなくてもいいかなと思えるほどです。難点は、Highゲインだとバッテリーの減りはかなり早いです。体感で1.5倍以上早く無くなります。


音質

一番よく鳴ったR2R2000(Red)での音質の感想は、「硬いというより超タイトでクリア。とてもスピード感のある音」です。芳醇さは皆無ですが「響いて伸びる高音」「漆黒の背景に浮かび上がるクリアな中音」「正拳突きのように鋭い低音」全てが気持ち良いです。R2R2000(Red)のアンプのパワーのおかげか、低音が少ないこともボーカルが遠いこともありません。とにかくクリアで締まった音は「どう考えても9,900円のイヤホンの音ではありません!」 断言できます。


エイジング

箱から出してすぐでは「笑うくらいカッチンカッチンでキンキンの音」です。最初はどうなるのかと心配しましたが、エイジング180時間くらいでなんとか落ち着きました。


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つなげるDAPのアンプ出力が上がるほどに、音が際限なく良くなるのは感動的です。HIFIMAN R2R2000(Red)で聴いた時は驚きましたが、もっと高出力のアンプならさらに良くなるのでは? とも感じられます。いろんなDAPやアンプに繋げたくなります(笑)。この感動が9,900円(税別)で得られるのは、RHAに申し訳ないくらいです。

付属品のイヤホンケースもカッコよくて造りも良いです。この価格帯のイヤホン付属品のケースで「普通に使いたい」と思えるのは珍しいですね(笑)。プラグとケーブルも最高級品ではないのでしょうが音質的に配慮されたもので、非常に好感が持てます。

面白半分で購入しましたが、予想外にとても気に入ってしまいました。本当に買ってよかったです。再販売されるのも納得できます。今ならDAPの出力も上がってますので、他社でも150Ωとまではいかなくても、インピーダンス高めのイヤホンを出して欲しいですね。まぁバッテリー持ちのことを考えるとアレですけど…。

とにかく「クセが強ければ強いほど魅力的」を地で行く、とてもオーディオファイル好みのイヤホンです。アンプの出力の高いDAPをお持ちの方は是非聞いてみてください。面白いですよ。

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