Astell&Kern SE100

2018年に発売されたAstell&Kern SE100。本機の売りはDACのESS社製「ES9038PRO」でしょう。よく「DACの銘柄だけでは音質は決まらない」と言われますし、全く同感ですが、設計者が数あるDACから厳選してその特性を生かそうと試行錯誤しているわけですから、音質に関わる重要な部品の一つであることも確かです。発売当時、ESSのフラッグシップDAC ES9038PROが初めて載るポータブルDAPとして注目を集めていましたね。


音質の第一印象は「超高解像」の一言に尽きます。私見ですがその音質は「中庸でどちらかといえばクール」で「冷たく硬質ではなく精密でサラサラ」「ガラスではなく超高純度のアクリルのよう」といったところでしょうか。分離が良く情報は非常に多いのですが、耳に届く前に整理整頓される感じでとても聴きやすいんです。音数の多い昔のCDなどは「今まで聴いていたのは何だったんだ」とリマスターしたみたいに高音質化して非常に驚きます。

個人的にはパワフルな音とは思いませんが、逆に線が細すぎることもありません。その辺も聴きやすさに貢献していると思います。音のバランスも良くイコライザーでいじる必要も感じません。

ただ、音に艶はあまり感じません。「ガラスではなくアクリルのよう」というのはその辺からです。これを面白くないと感じる方もいると思います。

音源によっては「CDを聴いてる感が強い」と思うこともあります。なんて言うか「ライブステージではなく、レコーディングブースが目に浮かぶ」みたいな(笑)。スタジオ録音なのだから当たり前でその通りなのですが…。素人が聴いても録音環境の違いすら感じられる。そんな空気感を余すところなく再現する、音源なりにしか聴こえないシビアさを感じます。


しかし、音楽ライブのBlu-ray鑑賞時の外付けDACとしてSE100を使用すると、会場の空気感や広さがとてもよく再現され、リアリティがあってすごく良いんです。実際に行ったライブのBlu-rayを見るとなおさらよくわかります。その時の感じが蘇ってきます。ES9038PROの高解像と情報量の多さが、会場のありとあらゆる音や声に余裕を持って対応できているようです。ライブ録音とかは特に相性が良いと思います。私はコンサートのBlu-rayを、BDレコーダーではなくMacでES9038PROをDACにして観るように変わりました。


その高音質とは裏腹に、5インチ画面の筐体サイズと241gの重さは私にはデメリットです。家から持ち出したのは購入後2年間で3回しかありません(笑)。買ってよくわかったのですが「5インチ画面のDAPはポケットに入れて持ち歩く気にならない」ですね。出かける際にDP-S1とSE100が2つ並んでいるとどうしてもDP-S1を手に取ってしまいがちで、自然と出番が減って今はほぼ据え置きDAC状態ですから。あと「2.5mmプラグ」も今となってはデメリットですね。耐久性には不安しかありません。イヤホンしたままプレイヤーを手からすべらせて「宙ぶらりん」となり、プラグが折れたかと肝を冷やしたことがありますし。


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SE100より小型で同じES9038PRO搭載のCOWON PLENUE Lを試聴はしましたが、音としてはSE100の方が好みでした。他と比較するとSE100の音は結構個性的だなと惚れ直しました。「SP1000」における「SP1000 M」のような、ES9038PROで4.4mm、4インチ画面、重量200g以下のSE100の後継機とか出たら最高なんですけど。

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